新聞作り入門

多彩な表現でひきつける(『宣伝研究』13年8月等「今月の時事レタリング」より
多彩な表現でひきつける(『宣伝研究』13年8月等「今月の時事レタリング」より

Ⅶ 見出しのつけ方

 

見出しの役割

 

見出しづけは編集の真髄
 ふだん新聞を読むとき、何気なく見出しから読み始めます。大きい文字で書体もいろいろ、背景に模様がつけられていたりと、紙面上でたいへん目立つ存在ですから当然でしょう。見出しだけ読んで、本文を全部読んだ気になってしまうことさえあります。
 読者の視線と関心を引き付け、読む気を起こさせ、本文の内容を知らせる――見出しの果たす役割は絶大です。
 紙面を作る側からすれば、見出しづけは、読まれる紙面に仕上げられるかどうかの分かれ目でもあり、編集作業の真髄と言ってもいいほどです。

 

①記事がそこから始まる目印
 本来、見出しにはどのような役割があるのでしょうか。
 まず第1に見出しは、そこに記事があることの目印だということです。読者は見出しがある場所から新しい記事が始まることを知ります。もし見出しがなかったら、どこからどこまでが1本の記事なのかわかりません。つまり、どんなに短い記事にも見出しをつけるのが鉄則です。

 

②内容を凝縮し読む気にさせる
 第2に、記事の内容を要約し、一目でわかる、読む気を起こさせる、という役割です。見出しが読み手の関心を引きつけなかったら、せっかくいい記事でも読まれない可能性があります。その記事で読者に伝えたい最も重要なポイントを短い言葉で書いたのが見出しです。

見出しのつけ方

 

①名称よりも内容
 手作り新聞でよくある、改善したい見出しの代表例が次の3つです。
 「…について」
 「…の報告」
 「…終わる」
 …の部分には行事や会議、機関の名称が入ります。
 この3つの表現はとても便利です。「安全衛生委員会について」「第37回代議員会の報告」「秋季体育祭終わる」。ウソを書いているわけではないし、1行ですべてを表していて合理的です。
 しかし、これらの見出しが読者の関心を引きつけるでしょうか。
 機関紙・広報の読者は、行事や会議が実施されたこと自体には関心がないかもしれません。行事や会議の名称よりもその内容、一番大事な出来事やテーマが最も大きい見出し言葉で出ていなければ、読者の関心を呼び起こすことはできません。
 見出しをつけるにはまず、記事をよく読み、内容を正確につかみましょう。見出しに使えそうな重要な言葉をメモしながら読み進み、その言葉をそのまま、あるいはアレンジして見出しにします。
 何を大切な要素と考えるかは千差万別で、見出しに「正解」があるわけではありません。ただし、的外れな見出しは、読者にも書き手に対しても失礼です。

 

②複数の見出しでメリハリつけて
 1つの記事に1本の見出しだけで済ませるのには無理があります。記事の内容を興味深く伝えるために、見出しは5本でも6本でもいいのです。1つ1つの見出しは簡潔な表現にして、複数の見出しを組み合わせて、総体として読者に理解してもらえるようにします。
 参考になるのは日々の一般新聞です。長い記事には1本の記事に4本、5本と見出しがつけられていて、見出しだけでも記事の内容が大体わかります。

 

③基本形をもとに自由に表現
 読者にいち早く記事内容を知らせ、読む気を起こさせるという見出しの機能から、次のような基本形が定式化されています。記事の内容によって、1本2行見出しなど、基本形を変化させて自由なスタイルで表現します。
 さらに、文字の大きさ、縦書き・横書き、書体、地紋、ケイ線やカットのあしらいによってメリハリをつけます。
○主(本)見出し
 記事の最も重要な内容、要素をズバリ言い切る。最低限これ1本でも成り立つ(7~9文字が適当とされる)。
○柱見出し
 「○○○について」のような全体の概要、テーマ、表題を示すもの(10字前後)。柱見出し1本だけはそっけない。
○肩見出し
 主見出しの肩にかけるようにつけ、記事内容の特色を表現(8字前後)。
○ソデ(脇)見出し
 主見出しの次にくるもので、副次的要素を表現する(9~11字)。
○小見出し
 本文中に本文文字より少し多きく太い文字で入れる(10字前後)。とくに長い記事の場合、読んでもらうには欠かせない。

 

④短く、わかりやすく
 見出し言葉は、限られたスペースに大きく、そして一目で内容がわかるよう、最小限の文字数で書きます。そのため、動詞や助詞を取り去ったり、略語を使ったりします。
○助詞の省略、動詞の名詞的表現
 原発(の)再稼働に抗議(した)
○略語・略称や助詞止めの表現。
 小(学校教)・中(学校教)教職員が
 市教(育)委(員会)要請へ(行く)
○算用数字を使う
 10年間で2千億円を浪費
 本文記事では漢数字を使う紙面でも、見出しでは算用数字を使います。少ない文字数で、一目で数の大きさがイメージできるからです。ただし、大きい数字は単位を漢字で表記します。

 

⑤客観見出しと主観見出し
 見出しの表現方法には、第三者として客観的に伝える客観見出しと、編集者の(あるいは読者代表としての)印象が加えられた主観見出しの2つがあります。
○客観見出し 記事の内容を具体的事実で表現します。速報性の高いニュース中心の日刊紙などは、客観見出しが多くなります。
自殺者1年で3万人超
○主観見出し 編集者や読者の考えを加味したもの。
「大もうけなのにベアゼロどうして」
「子どもの姿に思わずジーン」
 団体が発行する機関紙は、読者の理解を求めたり、論評・主張する記事が多く、<訴え見出し>を多用しますが、一方的な押しつけにならないように注意しましょう。1面全体を1つのテーマで作る場合、面全体のテーマを打ち出すスローガンのような<テーマ見出し>もよく使います。
 風刺やユーモアを効かし、シャレや流行語を取り入れるのも、読者の関心を引付けるのに効果的です。例えば「アブナイアベナイ閣」。
 見出しづけは難しいですが、個性あふれる表現ができる面白さがあります。